はじめに
株式投資では、まずどの株に投資するかを決めなければなりません。将来の業績の伸びが期待できる企業や、実態価値より株価が割安である企業を探すのに決算書はとても役立ちます。
決算書を用いた銘柄選びや企業分析の方法について書かれた本はいくつかあります。しかし、それらの多くは個人投資家にとって「難しい」のです。もちろんそれらの本に書かれている内容は至極まっとうで正しいものなのですが、決算書の細かい部分まで入り込み過ぎている感があり、会計の基礎を持っていないとなかなか理解できません。どんなに素晴らしい内容であっても、個人投資家が実践で使えるものでないと意味がないのです。
本書をお読みいただければ、「どのように銘柄選びをすればよいか」だけではなく、選んだ銘柄について「どのタイミングで売り買いをすればよいか」まで分かります。
本書で書いた内容は、どれも私が実際に株式投資を行う際に実践し、かつ良好な結果をあげているものばかりです。ぜひ本書の内容を実践していただき「勝ち組個人投資家」を一緒に目指しましょう。
会社四季報、決算短信の内容がとても役に立つことが分かりました!
成長株、割安株を探せるようになるかがポイントですね
バリュエーション指標を上手く活用しましょう!
PER、PBR、ROEの意味を正しく理解できるようにします!
目次
序章 「決算書を使った銘柄選び」とは?
・銘柄選びには決算書を使え!
・では、なにを見ればいいの?
・「決算短信」は速報性がキモ
第1章 情報満載! 会社四季報を使い倒せ!
・成長株、割安株、そして復活株
・そもそも「会社四季報」ってなに?
・「成長株」の探し方 業績が伸びている企業を見つけよう
・「割安株」の探し方 株価が、その企業の価値よりも安かったらお買い得!
・「復活株」の探し方 ”赤字縮小・黒字転換”がポイント
・注意! 業績予測はあくまでも「予想」です
・前号の数値と比較してみよう
・財務状況のチェックで、倒産の危険度を探ろう
・[会社四季報の裏ワザ①]株主構成に注意!
・コラム 財務大臣が大株主の企業とは?
・[会社四季報の裏ワザ②]外国人投資家、投信の持ち株比率に注意!
・「テーマ株」は取り扱いに要注意!
第2章 業績をタイムリーに知る 決算短信のチェックポイント
・そもそも決算短信とは?
・決算短信の種類
・決算短信はどういう構成か?
・[決算短信の活用法①]サマリー情報で、最新の業績をチェックする
・[決算短信の活用法②]企業の経営成績や財政状況について詳しく知る
・[決算短信の活用法③]貸借対照表、損益計算書やキャッシュ・フロー計算書を見る
・貸借対照表の仕組み
・コラム 貸借対照表の持つ意味
・損益計算書の仕組み
・コラム 包括利益計算書とは?
・キャッシュ・フロー計算書の仕組み
・[決算短信の活用法④]企業が抱えるリスクについて知りたい!
・[決算短信の活用法⑤]事業別の売上や利益、海外売上の割合が知りたい!
第3章 決算書に関連した代表的バリュエーション指標
・株価指標を使おう!
・PERの意味
・PBRの意味
・PBR1倍割れが「株安」なわけ
・PERとPBRの違い
・ROEの意味
・ROEが高い方が株価は上昇しやすい!
・配当利回りの意味
・配当金は株価の下支え効果を持つ
・コラム PER、PBR、ROEの関係を知ろう
・PER使用上の注意
・業績の変動が激しい銘柄や赤字銘柄の妥当株価の考え方
・成長株をはじめとした高PER銘柄への対処法は?
・注意! 1株当たりの純資産はあくまで「帳簿上」のもの
・高PBR銘柄は割高なの?
・自己資本の小さい企業の高ROEには注意!
・配当利回りのここに注意!
・[よくある間違い①]低PER銘柄に飛びつくな
・[よくある間違い②]低PBR銘柄に飛びつくな
・正しい低PBR銘柄の選び方
・[よくある間違い③]配当利回りが高い銘柄に飛びつくな
・増資や自社株買いによる株価への影響は?
・コラム 低PBR銘柄の株価が上昇しない理由とは?
第4章 中長期で狙いたい成長株投資への挑戦
・成長株ってどんな株?
・なぜ成長株の株価は大きく上昇するのか?
・なぜ成長株のPERは高いのか?
・成長株が割高なのか割安なのか判断できる?
・PERが高いことによるリスクとその軽減法
・成長株を成長の初期段階で買うことの是非
・成長株選びのポイント
・四半期決算で業績の変化を素早く察知しよう
・月次売上高でタイムリーな業績の変化をチェックしよう
・ROEとROAの併用で「レバレッジ経営」の有無を見極めよう
・赤字続きであるものの、成長期待が高い会社の扱いは?
・本当の意味での「成長株」を選択する方法
・IPO株への投資に対する考え方
・利益だけ伸びて売上が伸びない株はどうする?
・売上だけ伸びて利益が伸びない株はどうする?
・成長株なのに株価が上昇しない・・・どうしららいい?
・コラム 個人投資家とプロ投資家では目の付けどころが違う
・成長企業の探し方 高成長と収益力の高さがポイント!
第5章 大失敗しないための買い方・売り方
・株で勝つコツは大失敗しないこと!
・なぜ業績が良いのに株価が下がるのか?
・個人投資家が業績の変化を察知できるようになるまでには時間がかかる
・株価には「トレンド」がある!
・需要より供給が多くなる要因とは?
・業績と株価が相反する動きを見せたときはどうするか?
・いくら業績が良い銘柄でもこれだけは守るべき2つのルール
・株価のトレンドから買い時・売り時を見極める
・損切りは「業績」ではなく「株価チャート」で判断する
備忘録
株価収益率:PER(Price Earnings Raito)
PERは、株価と会社の利益とを比べてみて、株価が割安かどうかを判断する指標です。
今の株価が「1株当たり当期純利益」の何倍の水準にあるかを計算します。
倍率が少ない方が割安ということです。
PER = 株価 ÷ 1株当たり(予想)当期純利益
株価純資産倍率:PBR(Price Book-value Raito)
PBRは、株価が1株当たりの純資産、つまり1株当たりの残余財産の何倍の水準にあるかということを表しています。
PBR1倍割れの場合、「株価よりも、現時点で企業を解散したときに株主が受け取ることのできる金額の方が高い=株価が割安」であることを表しているのです。
PBR = 株価 ÷ 1株当たりの純資産
自己資本当期純利益率:ROE(Return On Equity)
ROEは、株主の所有分である自己資本を元手に、どれくらいの利益を稼ぎ出すことができているか、を見るものです。
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
PER、PBR、ROEの関係を知ろう
PBR = PER × ROE
もしPBRが低い銘柄があれば、その銘柄は「PER×ROE」も低いとも言えます。ROEが低く、その結果PBRが低いのでならば、株価はROEが低いことを反映した妥当な株価とも言えます。
株価の割安感が解消するレベル(PBR1倍)程度までの上昇は見込めるものの、それ以上の力強い上昇はあまり期待できないという推測をすることができるのです。
一方、ROEが高いのにPERが低いため、その結果PBRが低くなっている銘柄は、株価が割安に放置されている可能性が高まります。
高ROE、低PER、低PBRの銘柄は「お宝銘柄」と言えます。
また、PBRが高くROEも高い銘柄は、高ROEによる将来の純資産の増加を織り込んでPBRが高くなっていると判断できるため、妥当な株価が形成されていると言えます。
しかし、ROEがそれほど高くないのにPERが高いためにPBRも高くなっている銘柄は、割高であると考えることができます。
低ROE、高PER、高PBRの銘柄は、株価が実態より買われていることを表しているのです。
割安・割高 | PER | PBR | ROE |
---|---|---|---|
割高 | 低 | 低 | 低 |
割安 | 低 | 低 | 高 |
? | 低 | 高 | 低 |
? | 低 | 高 | 高 |
割高 | 高 | 高 | 高 |
? | 高 | 高 | 低 |
? | 高 | 低 | 高 |
? | 高 | 低 | 低 |
著者情報
足立武志(アダチタケシ)
公認会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)。足立公認会計士事務所代表、株式会社マーケットチェッカー取締役。1975年神奈川県生まれ。一橋大学商学部経営学科卒。資産運用に精通した公認会計士として、執筆活動、セミナー講師などを通じ、個人投資家に対して真に必要・有益な知識や情報の提供に努めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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